賃貸不動産を家族信託したケース
状況
愛知県にお住いのKさん(男性・70代)と長女さん(40代)からのご相談です。Kさんはマンションに奥さんと次女さんと3人暮らし、近くに長女さんご家族が住んでいます。
以前から、Kさん名義の駅前の土地1筆、建物1棟を飲食店に貸しており、今後も引き続き契約を更新して貸し出す予定です。しかし、もしKさんが認知症等で判断能力が衰えてきた場合、契約の更新ができなくなる可能性があるため、Kさんと長女さんは心配をされておりました。そんな折、Kさんのお知り合いの方がご病気で突然意思疎通ができなくなってしまいました。もしご自身にも同じようなアクシデントが起こった場合でも、Kさんに代わっていつでも長女さんが不動産の管理をできる方法はないかを知り合いに尋ねたところ、家族信託をご存知になり、ファミリアへ相談にいらっしゃいました。
家族信託の設計
当事務所では、Kさんと奥様、長女さん、次女さんの間で家族信託契約を結ぶご提案をしました。家族信託のスキームは以下のとおりです。
・信託財産:駅前の土地1筆・建物1棟 現金500万円
・委託者:Kさん
・受託者:長女さん
・受益者:Kさん
・第二受託者:次女さん
・受益者代理人:奥さん
・財産の帰属先:長女さん・次女さん
委託者(受益者)であるKさんが亡くなられた時点でこの信託は終了し、残余財産は長女さん、次女さんに。信託終了時に亡くなられていた場合には、法定相続人が最終の帰属権利者となるようにしました。また、Kさんの奥さんを受益者代理人としました。
家族信託によるメリット
Kさんが認知症などできちんとした判断ができなくなってしまうと、不動産の賃借人との再契約や、売却ができなくなってしまいます。今回、信託契約を長女さんと結んだことによって、不動産の名義はKさんのまま、Kさんに代わって長女さんが不動産の管理ができるようになりました。現在不動産を貸している賃借人との契約がいつ終わったとしても、建物の取り壊しや土地の売却が、長女さんの判断で任意の時期にできるようになり、駅前の不動産が塩漬けにならずに済みました。
Kさんはまだまだ認知症の心配もないほどお元気ですが、早めに家族信託契約をしていただき、もしものリスクに備えることができました。