金銭のみを家族信託したシンプルなケース
状況
都内にお住いのAさん(女性・60代)からのご相談です。
Aさんは、実のお母さん(90代)と都内マンションに二人暮らしです。(父他界)
以前から母も高齢のことから、いずれ施設へ入所することも一つの案として考えています。しかし、もしも母に認知症等の判断能力の衰えが見えてきたときには、母名義の口座から母のための施設費用や、別々に支払っている公共料金等も引き出しや支払いが出来なくなってしまうことをテレビや新聞等での家族信託特集で知りました。
母娘非常に仲が良く、お母さんはAさんにすべて任せる等、何でも話せる仲ですが、なんでも勿体無い、無駄なお金は支払いたくない。という性格でした。
Aさんは、母の今後も心配であると同時にAさん自身も、もし先に亡くなってしまった時のことも考えていました。
Aさんには、埼玉県に住む2つ下の弟さんがいますが、最近あまり話してはいないのが心配です。
設計
当事務所では、お母さんとAさんと、弟さんの3人の間で家族信託契約を結ぶご提案をしました。家族信託のスキームは以下のとおりです。
・信託財産:金3千万円
・委託者:お母さん
・受託者:Aさん
・受益者:お母さん
・第二受託者:弟さん
・財産の帰属先:Aさん
委託者(受益者)であるお母さんが亡くなられた時点でこの信託は終了し、残余財産はAさんに。信託終了時にAさんが亡くなられていた場合には、弟さんが最終の帰属権利者としました。
メリット
お母さんが認知症になってしまうと、お母さん名義の口座、また証券等は凍結状態となり、いくら実の娘であっても簡単に引き出しが出来なくなります。また、成年後見人をつける必要があり、お母さんのお金をお母さんのために使うのにも都度、成年後見人へのお伺いと許可であったりと非常に煩雑となるところでした。
Aさんの本来のご意向が、お母さんの財産の維持管理、生活費、医療費、及び介護や療養費等に充当することが目的であったため、元気なうちに家族信託の制度を知って、契約できて良かった。と喜んでいただけました。