骨折をきっかけにシニアライフを再設計。家族信託と生前贈与を組み合わせ認知症&相続対策を行ったケース
お客様のご状況
名古屋市内にお住いのお父様(A様・90代)、娘さん(B様・60代後半)からのご相談です。
A様は名古屋市内におひとりで住まわれており、B様はご結婚されてから、愛知県内の別の市にお住まいです。
ある時、A様が転倒して骨折をしてしまい、それをきっかけに老人ホームに入所しました。その結果、A様のご自宅は空き家になっていました。
ご家族構成
・父(A様)
・長女(B様)、夫、お子様2名
ご資産の状況
・ご自宅(土地・建物)
・預貯金(6~7,000万円ほど)
ご相談内容・課題
A様の骨折の影響により、おひとり暮らしは厳しいとのことから、老人ホームに入所されています。お体が不自由な部分もあることから、いつ、何があるかわからないというご不安をおもちでした。同時にコロナウイルスの影響で、ご家族や人に会う機会が少なくなったこともあり、認知症の不安も大きくなっていました。
このままA様が認知症になると、商店街にあるご自宅の管理や売却ができなくなってしまいます。成年後見人を付け、家庭裁判所に申立てを行い、受理されれば売却などを行うことは可能です。
しかし、成年後見人を付けると、売却のタイミングがご家族の意思では決められないということや、価格面で不利になる可能性があるといった懸念点があります。
また、ご資産の総額を考えると、相続発生のタイミングで、それなりの相続税がB様にかかることも想定されました。
このようなことから、A様がお元気で、意思能力がしっかりしている今のうちに、認知症による資産凍結対策、相続税対策をおこなっておくことをおすすめしました。
家族信託の設計
今回のケースでは、下記のように家族信託を設計し、あわせて生前贈与も行いました。
【家族信託のスキーム】
・委託者・受益者:A様(父)
・第一受託者:B様(娘)
・第二受託者:B様の夫
・財産の帰属先:B様→孫
【生前贈与】
孫に300万円ずつ贈与
家族信託によって実現したこと
家族信託を行うことで、A様の老後の生活にかかる費用についての不安は解消されました。B様が責任をもってご自宅を管理し、必要なタイミングで売却をすることができます。また、金銭についてもA様の暮らしを支えるために必要な分を信託しましたので、日常的な財産管理についての不安も解消することができました。
併せて、A様のご意向に沿う形でお孫さんに生前贈与をすることで、A様の想いをしっかりとご家族に伝え、税金面での不安を減らすこともできました。
サポートさせていただいた私どもとしましても、今回のケースは、健康不安をきっかけに、その機会を活かして家族と話し合い、必要な対策をとることができた事例として心に残っています。こういった「きっかけ」は人生の様々なタイミングで訪れますが、その時々に面倒だと後回しにせず、対策をすることがとても大切だと感じます。
一度、認知症になってしまうと、使いたくても活用できない「法律の仕組み」がたくさんあります。何か少しでも不安なことがあったら、その「きっかけ」を逃さず、些細なことでも私たちにご相談してください。