家族信託における「受託者の義務と実務」とは? | 名古屋 家族信託ステーション
家族信託は、シンプルに考えると「ご家族などに、もしもの時の財産の管理や運用を信じて託す」という法律の仕組みです。
この時、
①託す方(委託者)
②託される方(受託者)
③その財産の利益を受ける方(受益者)
という3つの立場が生じます。
実は、家族信託では②の「託される方=受託者」の役割が非常に重要です。
この部分をしっかりと整備しないまま家族信託をおこなってしまい、後にトラブルになってしまうケースが散見されています。
そこで、このページでは、受託者の義務や、家族信託における実際の業務について解説してゆきます。
受託者の7つの義務
①管理者としての注意義務
「善管注意義務」ともいわれますが、契約書に記載した家族信託の目的を実現するために、その目的に従い、善良な管理者として、正しく信託に関する事務をおこなわなければらないというものです。
②忠実義務
受託者の義務として最も重要なものの一つで、法令及び信託の目的にそって、受益者の利益のために、信託財産の管理・運用・処分をおこなわなければならないというものです。
③分別管理義務
受託者は、受託者自身が持っている財産と、信託財産とを分別して管理しなければならないというものです。
具体的な分別管理の方法については、金銭を信託する場合は、その金銭を管理するための専用の口座をつくります。また、信託する不動産については信託されたことを登記します。
④自己執行義務
受託者は言葉のとおり、委託者から託財産の管理・処分を「信じて託されて」いるため、原則として受託者自らが責任をもって信託に関する事務をおこなわなければならないというものです。
ただし、税務や法務など専門的な分野にも重なることから、やむを得ない場合は、専門家などに委託することも可能です。
⑤公平義務
受託者は、受益者が2人以上いる信託(ご両親を受益者にした場合など)において、すべての受益者に対して、公平になるように信託に関する事務をおこなわなければならないというものです。
⑥帳簿等の作成・報告・保存の義務
受託者は、信託財産に関する帳簿や、その他の書類を作成、報告、保管しなければならないというものです。
具体的には、毎年1回、一定の時期に貸借対照表、損益計算書その他の書類を作成し、その内容について受益者に報告します。また、これらの信託に関する書類を、10年間保存しなければなりません。
詳細はこの後の「家族信託における受託者の実務」でご説明しています。
⑦損失てん補責任
受託者の怠慢や正しく事務を行わなかったことによって、信託財産に損失、変更などがでてしまった場合、損失のてん補や原状回復をおこなわなければならないというものです。
家族信託における受託者の実務
たくさんの「義務」があり、受託者になるのは大変そうだ・・・と感じたもいらっしゃるかと思います。
では実際、家族信託が開始されたあとの実務とは、どのようなことをしなければならないのか詳しくみてゆきましょう。
受益者への定期報告
手続き先:受益者
頻度・時期:毎年1回
内容
適宜、受益者様へ信託財産の状況を報告します。
財産目録の作成及び帳簿の作成及び報告の必要があります。
(基本的にはお通帳のご提示で十分です。)
信託口口座の預金を使った場合には用途を記録しておきます。
※信託に関する書類を一定期間、保存の必要があります。また、もし、受益者から請求がある場合には信託に関する書類を閲覧させる必要があります。
火災保険の契約者変更
手続き先:保険会社
頻度・時期:必要に応じて
内容
信託した不動産の火災保険の契約者変更の手続きを進めます。
固定資産税・都市計画税
手続き先:市役所
頻度・時期:年4回
内容
通常の税金の支払いと同様ですが、受託者の信託口口座の預金から支払います。
マンション経費のお支払い
手続き先:不動産会社
頻度・時期:必要に応じて
内容
通常の支払いと同様ですが、受託者の信託口口座の預金から支払います。
不動産の売却
手続き先:不動産会社
頻度・時期:必要に応じて
内容
売却の判断は受託者が行うことができますので、通常の売買手続きと同様の流れで進めることができます。
ただし、売却の必要が発生した際には、まず専門家とのお打ち合わせにて必要事項を確認のうえ進めることをお勧めします。
生活費・医療費のお支払い
手続き先:必要に応じて
頻度・時期:必要に応じて
内容
通常の支払いと同様ですが、受託者の信託口口座の預金から支払います。
信託計算書の提出
手続き先:税務署
頻度・時期:年1回(1月31日までに提出)
内容
「信託の計算書及びその合計表」を提出します。
金銭の追加信託
手続き先:専門家にご相談ください
頻度・時期:必要に応じて
内容
契約書に定めがある場合は実施することができ、目的に沿って、委託者、受益者に必要な金銭を信託口口座に振り込みます。
不動産の追加信託
手続き先:専門家にご相談ください
頻度・時期:必要に応じて
内容
改めて契約書の作成や不動産の登記が必要になります。
契約内容の変更
手続き先:専門家にご相談ください
頻度・時期:必要に応じて
内容
契約内容の変更は受託者と受益者の合意が必要です。
※受益者の判断能力が必要です。
信託の解除
手続き先:専門家にご相談ください
頻度・時期:必要に応じて
内容
家族信託を終了したい場合は、受託者と受益者の合意により、いつでも終了が可能です。
当ステーションの受託者アフターサポート
このように、受託者の義務や実際の業務は多岐にわたります。
実際のところ、専門家に依頼せずとも、ご自身でできることがほとんどではあります。
とはいっても、初めての実務はわからないことも多いでしょうし、家族構成や財産状況、健康状態などに変化が起こった際の手続き、また関連する法律の変化など、わからないことや、ご不安になることも多いと思います。
そこで当ステーションでは、受託者の方への定期的なアフターサポートを行っています。
受託者アフターサポートの内容
家族信託契約内容の変更に関するご相談対応
家族信託のご契約内容に関する疑問・不安に関するご相談対応
家族信託のご契約者様の健康状態が変化した際のご相談対応
財産管理の方法についてのご相談対応
遺言や任意後見制度など、その他の生前対策に関するご相談対応
なにか受託者としてお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください!